2016年6月21日火曜日

時代遅れのくせに謙虚さが足りないテレビというもの



テレビがおもしろくない、なんていっても、なにをいまさらです。テレビはおもしろくないものに決まっています。まずはここを押さえましょう。テレビはおもしろくないものなので、それで仕事をしているテレビ局としては、内心たいへん申しわけのない、肩身の狭い思いをしているわけです。



どのくらいおもしろくないか、といいますと、2015年9月に『スカパー! 』が実施した「テレビ視聴に関する調査2015」というのがあります。対象は全国の15歳〜69歳の男女1000名です。



この調査のなかに≪最近のテレビ番組に対する気持ち≫ というブロックがあり、そこでは以下の結果が報告されています。たいへんです。

◆「最近、テレビ番組がつまらないと感じることが多い」約8割 (78.6%)
◆「似たような番組が多い」9割(89.6%)
◆「もっとハチャメチャな番組があってもいい」6割 (60.6%)
◆「子どもに見せたい番組が少ない」7割 (70.0%)
◆「子どもに見せられない番組があってもいい」約6割 (62.7%)



どのくらいおもしろくないかについては、もうひとつ傍証があります。といっても私だけが受けている感じなのかもしれません。それはテレビに対する期待の薄さ、つまり番組を視聴する動機の浅さです。きわめて小さな、どうでもいいような要因で視聴率が大きく変化するのを見ると、そう考えざるを得ないと思います。



たとえば『笑点』(日本テレビ)は一貫して15%程度の安定した視聴率を維持していました。しかし5月15日から6月19日までの6週間は、連続で20%を超えています。6月19日は24.1%です。



桂歌丸(79)から春風亭昇太(56)への司会交代とメンバー入れ替えというトピックスだけで10%近くも動くのです。あ、円楽のラブホ4500円というニュースもありましたか。



ともあれ、それほどの理由でもないのにこれだけ大きく視聴率が動くということは、いかに視聴者が変化を求めているかということで、それはすなわち、いつもそれほどおもしろいとは思わないけれどもなんとなく観ている、ということなのです。



もうひとつの例は、フジテレビの“月9”といわれるドラマ枠です。2016年4月〜6月期は福山雅治(47)主演の『ラブソング』でした。福山雅治の結婚→休養からのドラマ本格復帰第1弾であり、おおいに期待されました。しかし終了してみれば全話平均視聴率8.4%。1話ベースでいえば1969年以降に放送された月9相当1時間ドラマの歴代最低視聴率まで記録してしまっています。



理由は、単純に前評判の悪さ、とくに年の差恋愛というテーマとキャスティングだといわれています。そんな前評判だけでマシャマシャを起用しながら歴代ワーストワンまで落ちてしまうというのも、ふだんからつまらなーい気持ちでテレビを観ている人がいかに多いか、ということの現れでしょう。



ですからテレビ局としては、「これ、つまらないものですけれども」と、まるで盆暮れのお届けもののようにおずおずと番組を差し出しさなければならないわけです。つまり平身低頭というか、どうか、なにとぞ、ぜひともご覧くださいませ、といわなければならないのです。そしてこれがいまのテレビ局と視聴者の位置関係です。税金でまかなわれているNHKは別にして。



視聴者〈高〉、テレビ〈低〉というわけです。視高テ低。始皇帝と憶えましょう。ぜひとも必要な情報はテレビでなければ得られないということもありませんし、これはもう動かし難い事実です。



そんなことはむかしからだ、とおっしゃるかもしれません。しかしそのさらにもう少しむかしには、映像は映画館かテレビでしか観られなかった時代があったのです。他人さまの顔の動き、表情をマジマジと眺められるようになったのも、外国の風物がほぼリアルタイムで観られるようになったのも、テレビが普及してからです。



映像をあたりまえにいつでもどこでも観られるようになったいまは、別にそれがテレビでなければならない理由もありません。そんなテレビがどうしていまだ命脈を保っているかといえば、これまでに蓄積してきた莫大な投資のおかげです。機動力だけは他を圧しています。



しかしテレビ、テレビ局のほうにその自覚、シコーテテーの自覚があるか、といえば、そうではありません。テレビがおもしろくないことはわかっているはずなのに、とりあえずここれでも食らえ!! とばかりに投げつけてきます。



テレビ局に、視聴者に対する遠慮や繊細さは微塵もありません。タダで見せてやっているのだから、というその無神経さ、脳天気さに視聴者はいつもイライラさせられています。よく高飛車だの上から目線だの批判されているフジテレビは、まさにその典型というわけです。



ではどうしてテレビがつまらなくなったのか、その理由です。最大の理由は、先ほども話に出たように社会が高度に情報化されて、映像メディアがテレビだけの時代でもなくなったということです。インターネットがテレビに与えているダメージは、広告媒体としての役割を含め、たいへんに大きなものです。



でもまあ、メデイア間の競合が激しくなったとはいえ、番組制作においては遥かに豊かな経験とノウハウをもっているテレビです。もう少しなんとかならないものか、という議論になったときに必ず出てくるのが、クレームの多さからくる自主規制の問題です。思い切ってなにかをやろうとするたびに、なんだかんだ文句を付けられる、これではおもしろいものをつくれるはずがない、といういいぶんです。



さきほどの『スカパー! 』のアンケート調査の結果をもう一度、見てみましょう。

◆「最近、テレビ番組がつまらないと感じることが多い」約8割 (78.6%)
◆「似たような番組が多い」9割(89.6%)
◆「もっとハチャメチャな番組があってもいい」6割 (60.6%)
◆「子どもに見せたい番組が少ない」7割 (70.0%)
◆「子どもに見せられない番組があってもいい」約6割 (62.7%)



「もっとハチャメチャな番組があってもいい」6割 、「子どもに見せられない番組があってもいい」6割です。視聴者がいかにテレビに刺激を求めているかがわかります。そして、刺激を求めているのに、思い切って刺激的なことをすると直ちに批判が殺到するという状況が生まれています。



なぜこうなるかといえば、テレビ局が視聴者に嫌われているからです。おもしろくないものばかりつくっているくせに調子に乗って高飛車で、という印象が染み付いてしまっています。ですからわずかなヤンチャやはみ出しも大目に見てはもらえないわけです。



視聴者の過敏な反応には、これまでテレビ局が視聴者の声に素早く対応してこなかったという経緯も、原因のひとつです。実際のところ、テレビ局はスポンサーの顔色をうかがうばかりで視聴者は蚊帳の外に置かれているといっても過言ではない状態までありました。タダで観せてやってるのだから文句はいうな。これが視聴者に対する高飛車な態度、上から目線を増幅させてもいたのです。



こうしたテレビ局の態度に業を煮やした視聴者は、いまやテレビ局を飛び越えてまっすぐスポンサーに文句をいうという、たいへんエゲツない、しかし効率のよい戦術をとるようになりました。効率がよすぎて、またさらにテレビがおもしろくなくなっています。



結局、テレビ局はメディアでありながら視聴者とのコミュニケーションがまつたく不足しているのです。これからのテレビ局のあり方は、メディア論からばかりではなくて、一見古めかしい顧客対応の観点からも考え直していく必要があると思います。



ところで、テレビがおもしろくなくなったのには世の中がおもしろくなくなったのがもうひとつの大きな理由だと、私は思っています。それをいっちゃお終いよー、なにをエラそーにー、ですけれども、とにかく世の中、おもしろくありません。



というわけでテレビはたぶんこのまま時代の波に呑み込まれ、視聴者の冷めた視線を浴びつつ沈んでゆくのでしょう。テレビのためにわざわざ世の中をおもしろくすることもないので。(了)


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