「おけつを掘る」おっと間違いた(by荒木経惟)、「墓穴を掘る」という言葉があります。失敗の原因を自分でつくってしまうことです。「自滅」と違うのは「自滅」は直ちに失敗であるのに対して「墓穴を掘る」ほうは穴を掘る時間の経過が設定されていることです。そこに間抜けさが生まれます。
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同時にこの時間経過の感覚は、立派な墓穴を掘っているにしてもその穴にまだ落ちてはいない、100%落ちるとも限らない、という猶予も産み出します。自ら滅亡する方向へすすんではいてもなにかの拍子にハッと我に返って足を止めることができる、というやさしさがあります。
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そんな「まだ引き返せるぞ。冷静になれ」な記事がありました(↓)。少し長いので途中で合の手を入れながらご紹介しましょう。
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◆『産經新聞』2019年1月25日配信
【女性の胸元 「寄せて上げる」から「小胸にミニマイズ」へ】
《 ◆ 胸元をコンパクトに見せるための下着が注目されている。
平成の始まりは、胸を大きく見せる「寄せて上げる」下着が主流だったが、今や大きな胸は、おしゃれの邪魔との声も。女性の就業率の上昇に伴い、理にかなった変化だという指摘もある。
◆ 髪で隠す
東京都港区の会社員、わかこさん(47)=仮名=は、ロングの髪先を必ず体の前に流すようにしている。胸を覆い隠すためだ。わかこさんの胸は、ブラジャーのサイズでいうと「Hカップ」。取引相手がチラチラ見てきたり、飲み会の席でからかわれたり…といったハラスメントの経験もある。
「胸が相手に余計なことを思わせるのが嫌でした」。パッド(形を保つための詰め物)を抜いてブラの厚みを抑えたり、大きめのシャツを着たり…と胸が小さく見える工夫を重ねてきた。
そんななか、下着店で「大きな胸を小さく見せる」といううたい文句のブラと出合ったのが数年前。「画期的だ」と購入して以来、愛用し続けているという。
下着大手のワコールは平成22年、「CuCute(キュキュート)」と名付けたブラを発売。「豊かなバストをコンパクトに見せる」とうたった。27年にはセシールが「さらしみたいなブラ」を出し、「さらしを巻いたようにしっかりボリュームダウンできる」とした。
ともに一般的なブラと違い、胸に2つの山を作らず、胸を平たくし、高さやボリュームをおさえるのが特徴だ。
どちらも売り上げは堅調で、「今後さらに伸びるとみている」(ワコール広報・宣伝部)。セシールは4月に「さらしみたいなブラ」の種類を増やす。》
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胸が大きい苦労は、肩こり、スポーツ時以外では男の好奇あるいは好色な視線ということになるでしょう。で、自己防衛策として「胸元をコンパクトに見せる」努力をする。それにしても「さらしみたいなブラ」などと女剣劇の浅香光代(90)御用達みたいなブラジャーの存在はいまのいままで存じ上げませんでした。男のあたりかまわぬスケベの厚かましさ鈍感さはもっともっとキツく責められるべきだとワタクシは思います。
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ところで実際に胸が大きいと肩こりがしやすいのか? と思って調べてみたら三重大の笠井裕一教授が2012年に「Relationship Between Brassiere Cup Size and Shoulder-Neck Pain in Women(女性のブラジャーカップのサイズと肩こりの関係)」という論文を発表していることがわかりました。
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教授がアンケートで調べたところ「肩こりの程度はカップサイズに比例する。トップバストのサイズは関係ない」というあたりまえの結果が出たそうです。なんだか間抜けです。ところが教授はさらに重大な指摘もしておられて、「Dカップ以上の人がこんなに多いとは思わなかったので、とてもびっくりしました」なのです。あたりまえなのに。
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339人が協力した今回の調査では、Dカップと申告した人は72人、Eカップ以上は63人だったそうで、合計135人、約40%です。とうぜんながらこれはカップサイズのお話ですから、下着メーカーはAからE以上の何段階かを設定するうえで、はじめから適当な偏差を割り当てているはずです。ですから、「Dカップ以上の人がこんなに多いとは思わなかった」と「びっくり」したというのはいささかイノセントというものでございましょう。
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背景には、やはりいずれかの理由で男の目に女の胸元は実際よりもコンパクトに見えている、また女としても自己申告の際には控えめに話してしまう、ということがあります。たぶん。これも男の厚かましさ鈍感さの罪であるとワタクシは思います。ワタクシ女の見方です。
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ざけんじゃねーよ!! こっちは生まれてこのかた肩なんかこったことねえんだよう!! とおっしゃる方、たいへん申しわけございません。
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記事に戻ります。ここまでは現状説明で問題はないのですが、ここからやおら墓穴を掘りはじめます。
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《 ◆ 女性デザイナーの台頭
こうした女性の“胸元改革”について「近年、影響力を持つデザイナーに女性が増えたことが大きい」と指摘するのは、ファッション誌「Numero TOKYO(ヌメロ トウキョウ)」の田中杏子(あこ)編集長だ。
田中編集長によれば、ファッションの世界では1990年代後半以降、ステラ・マッカートニーさんやフィービー・ファイロさんといった女性デザイナーが活躍している。デザインの傾向は、女性がゆったりと楽に着られるシルエットに変わった。男性デザイナーたちが打ち出してきた、腰がくびれ、胸の谷間をきれいに見せるグラマラスな洋服とは一線を画す。
「これら女性デザイナーによるモダンなデザインの洋服は、胸をミニマイズ(小さく)したほうが格好良く着られる」と田中編集長。田中編集長自身もここ数年「胸のミニマイズ」を試行錯誤してきた一人で、胸元をコンパクトに見せるワコールのブラの商品企画に参加したこともある。
◆ 働く女性
田中編集長はまた、ブラの傾向の変化には「女性の社会進出」も影響していると指摘する。
バブル崩壊後の4年に共働き世帯数と専業主婦世帯数が初めて逆転し、7年以降は共働き世帯数が上回っている。昨年8月以降、15~64歳の女性の就業率は7割に達するなど、仕事を持つ女性は確実に増えた。一方で、職場では、ハラスメントが課題に浮上している。「男性と同僚として働く中で、胸が目立たないようするのは、理にかなった服のあり方」と田中編集長は話している。(文化部 津川綾子)》
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つまり胸元をコンパクトにという志向の理由に、「流行のおしゃれ」が加わったわけです。いまの女の美学は胸元コンパクトだ、と。もちろんそれは一部のトレンドに過ぎませんが、勢いがあります。したがってまた胸を「CuCute(キュキュート)」締め付けるのですね。
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で、ここからですよ。
「田中編集長によれば、ファッションの世界では1990年代後半以降、ステラ・マッカートニーさんやフィービー・ファイロさんといった女性デザイナーが活躍している。デザインの傾向は、女性がゆったりと楽に着られるシルエットに変わった。男性デザイナーたちが打ち出してきた、腰がくびれ、胸の谷間をきれいに見せるグラマラスな洋服とは一線を画す。」
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女性デザイナーが活躍し、「デザインの傾向は、女性がゆったりと楽に着られるシルエットに変わ」って、でもって胸を締め付けてしまう矛盾。ゆったりと楽に着るのなら、いとうあさこ(48)をみならったほうがいいのではないか、とワタクシ思います。
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このライターも矛盾に気がついています。いきなり女性の社会進出にお話が切り替わります。そして「男性と同僚として働く中で、胸が目立たないようするのは、理にかなった服のあり方」と実利のお話でまとめようとします。
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しかしそれは理にかなってはいません。「男性と同僚として働く中で、胸が目立たないようする」こと自体が本来は非合理で不自然です。またそのように、男の目を意識する不自然さを察知できる感性のために「女性がゆったりと楽に着られるシルエット」はあるのではないでしょうか。
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流行のために女は自らコンパクトに胸を締め付けることもある、というあたりまえの事実を認めるのにも抵抗が生じる時代、ということです。「流行」の本質についてはまた議論すればよろし。とにかく女性性を尊重する思潮に気を取られるあまり自己規制してしまう。その不自由を演じているライターは女です。保守的な方々の常套句でもある「魔女狩り」の墓穴へ、あと数歩のところまできていますね。(了)
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